毎年のクリスマス祝会では、いつも素敵なお話しを聞かせてくださるI姉がこの10月に新しい本を出版された。個人的な思い入れではあるが、I姉を全く存じ上げない釜石時代、小さな絵本『マローンおばさん』(こぐま社)によって、とても辛く悲しい出来事を乗り越えるために、大変深く慰められ癒やされた経験がある。その作者が当教会のI姉であり、今回の『子どもに語る日本の神話』(こぐま社)の再話者である。
再話者というのはあまり聞きなれない言葉であるが、I姉は優れたおはなしの語り手であり、語り手の指導者でもある。本著の帯にはこう書かれている。「・・耳で聞いてイメージしやすい再話です・・元々は語りであったという『古事記』の“物語”としてのおもしろさを子どもに伝えたい、と古事記研究の第一人者とベテランの語り手が協力。読み聞かせやお話会に最適な再話が実現しました。古事記入門として大人も楽しめます。解説付。」もう一つが「・・神さまたちにも、人間らしいところがある!?・・国を生み、天地をまたにかけて往来するパワフルな神さまたち。けれども駄々をこねて泣きわめいたり、兄弟で争ったり、だましたりだまされたりと、意外に人間くさい振る舞いもあって、今を生きる私たちのルーツを見るようです」と書かれている。まったくその通りの面白さを十分に味わえる一冊である。
特に日本の神話が、物語としてではなく、天皇制を支える「歴史」として利用された時代や役目を知る者には、あまり近づきたくない分野である。しかし今回の古事記のお話しを通して、むしろ古い神話の世界が有する豊かな世界を知る機会になった。何より漢字文化が入ってくる以前から、語り部たちによって「口伝」により伝承され、人々は耳から入る音によるイマジネーションの世界として共有していたことを学んだ。この本の素晴らしさは著者たちの的確な「解説」にある。これまでの誤解を正し、より深く神話や物語を理解する上でとても助けになった。
この本のシリーズには世界各地の昔話がラインナップされている。昔話や神話の世界が、豊かな物語性と人々の営みを背景に作られてきたのだと思う。聖書にも神話が含まれるし、クリスマスはまさに不思議な神話的物語でもある。大切なのはその意味と出会うことである。
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