2013年12月4日水曜日

坂町坂だより NO.306


 
 人生には予測もしないことが起こるものである。バザーの準備に追われていた週の中盤、茨城の田舎に住む身内が交通事故で亡くなるという訃報が届いた。早朝の散歩の途中での事故だった。大きなショックであったが、直ちに駆けつけ、連日の葬儀に向けたお手伝いとなった。後半は接近する台風の動向に気を揉み、葬儀のことでの往復に疲れも溜まってきていた。更に日常業務に追いかけられていると、今度は教会バザーのポスター掲示を巡って、再びの難題が発生した。詳しくは書けないがこのポスター対応で結構胃が痛み、背中も痛くなった。心も深く傷ついた。今後第3幕もあり得ると予測している。そんなポスター受難のバザーではあるが、台風27号の大雨の後、秋晴れの日曜日にご近所の方々と楽しく持てそうである。そうなることを心から祈ろう。

 という訳で、落ち込んだ気分を癒やし、心を晴れやかに整えてくれるのは、素晴らしい人物の珠玉の名言である。先日入手した『熊田千佳慕(くまだちかぼ)の言葉 私は虫である』(求龍堂・20104月)の細密画と童画と、その数々の言葉が素晴らしい。1911年(M44)生まれ、2009年に98歳で亡くなっているが、本当に凄い方である。

 「よく親父に言われました。乞食になっても王様になっても、愛は忘れるなって」から始まる1冊。「僕の絵具箱には白と黒の色がない」「黒は闇を支配する神の色。いろいろな色を混ぜ合わせれば黒になる。だから黒も使わない」「・・光は神でしょ。だから白は使わない。紙の白地を残してそれを表します」また「愛・・愛は感じるものであり、言葉ではない。愛は感じるもので、無言である。美は感じるもので、言葉ではない。美は感じるもので、納得するものではない。美は感じるもので、無言である。美は感であり、智ではない」と歌う詩人でもある。

 1本の鉛筆しか持たず消しゴムを持たない画家は、「見て、見つめて、見きわめる」画法を「啓示」されて描いてゆくが、暮らしぶりは極めて貧しいものであった。それを自ら「ビンボ―ズ」と複数形にして境遇を笑ってしまう。夫人のご苦労は想像を超えているが、70歳の時にようやく世界に認められた。90歳を超え、尚ピュアーな魂から生み出される世界は、命あるものへの限りない優しさと愛に溢れている。

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