2014年6月26日木曜日

坂町坂だより NO.339



 本文884頁、解説を加えると890頁を超える堂々たる伝記、復刻版『ブゼル先生伝』(著者・栗原基、伝記叢書109、大空社1992年)を10数年振りに手にして、改めて読み直している。原本は1940年、昭和15年に発行された限定500部のものである。栗原基氏は旧第三高等学校(現京大の前身)教授であったが、その栗原氏の大変な労力と、それを支えたブゼル先生との深い出会いや敬愛の思いがなければ到底成し遂げられなかったに違いない。膨大な資料と書簡類、また日米の関係者の証言とたくさんの人々の思い出など、収集整理するだけでもかなりな作業であろう。ブゼル先生は1936年(S11年)25日に満69歳で召されたが、死後4年以上かけて発行に至っている。

実は先日、現遠野教会牧師・遠野聖光幼稚園長であるM先生の紹介によって、今秋11月に開かれる尚絅学院「建学の精神研修会」において講演を依頼され、それをお引き受けした。そこでM牧師から復刻版をお借りして読み始めた次第である。予期せぬことであったが、ブゼル先生の後半の生涯を改めて思い起こすことに意味があると思った。

先生は、仙台のミッション・スクール、尚絅女学校の創設期1892年(M25年)に弱冠26歳で米国より来日、初代校長として今日の尚絅の基礎を築かれた。女子教育だけではなく青年にも聖書を教え、そこからは大正デモクラシーの吉野作造、島地雷夢、内ヶ崎作三郎らが受洗し、著者の栗原氏もバイブルクラスの一員であった。更に1920年(T9年)のクリスマスに、54歳で遠野に移住し、翌春に遠野聖光幼稚園を創設されたバプテスト派の宣教師である。

1981年、私の牧師・園長としてのスタートが遠野であり、そこで様々な形でブゼル先生と出会った。もちろん生前にお会いすることはなかったが、晩年を迎えた先生に教えられ、お世話になった方々に出会った。その方々の多くが既に天にある。また神の不思議な導きとしか言えない経験にも与ることができた。日本のかなりの教会、私立大学や女学校、幼稚園・保育園、病院等は、実に数多くの宣教師たちの命を懸けた働きによって基礎が据えられ、今日までの歴史がある。そのことを忘れないために「遠野ブゼル先生物語」を語ろうと準備を始めた。

0 件のコメント:

コメントを投稿