先週のこの欄に、渋谷での脱原発の「ママデモ」について書いたが、紹介だけでは裏付けに欠けるので妻と二人で一緒に参加した。たまたま教会での集会も終わったところであり、お天気にも恵まれていたので出かけることにした。脱原発の金曜デモにも、また他の脱原発集会にもなかなか都合がつかず参加できないことが多い。だから今回のママデモの事を論評することなどできないが、やはり初めてのママデモは少々こころもとなかったように感じた。しかし、このデモの企画から開催までの準備や手続き、安全に行うための応援の要請・打ち合わせ等々、初めてゆえのご苦労がたくさんあったことを想像しながら歩いた。
主催者発表では約500人の参加者。ママたち、子どもたちが先頭に立ちバギーの幼児やパパ達が続いた。女性が大半であるが、私たちのような孫のいる中高年層が後列を歩いた。全体は2つのグループに分かれ、交通規制の警官に守られ、デモ行進の補助をする男性陣にも助けられてゆっくりと歩いた。参議院議員1年生のY氏も参加し、道行く人々に主旨を説明し、繰り返し脱原発を訴えていた。
孫のような幼児も含め、周りにはお祖母ちゃん、お祖父ちゃんたちが幾組も歩いていた。渋谷駅から青山通り、母校の前を通り左折して表参道ヒルズの前、明治通りへ曲がり公園で解散というルートで、1時間半程で約1万歩を歩いて無事に終了。日曜の夕方、多くの若者たちで賑わう交差点を歩道ではなく、道路上から歩いて見ることの意味を思わされた。それは「視点の転換」という大切な経験であった。
家庭の食卓においても時には座る場所を変えてみる。すると見えてくる「世界」が変わってくる。固定化しやすい私たちの視点、観点を時に変えてみる。礼拝堂の座席の位置も変えてみること。便利で快適な、大量消費やブランド志向の大都市文明を、様々な生産で支えている地方と交流して視点を変えてみること。エネルギーを生み出し、廃棄物を受け入れている地域に行ってみること等。国や民族の問題でも同じことが言えるだろうし、今回のママデモが成し遂げたのは、ママたち自身による視点の転換という挑戦であった。今までは歩道で眺めていた自分たちが、未来である子どもたちと一緒に道路に立っていたのだから。