2014年5月10日土曜日

坂町坂だより NO.332



 GWの後半は3日の「憲法記念日」から再スタートである。天気予報では好天が続くとされているが、現実の「日本国憲法」を取り巻く環境は暗雲が垂れこめているような状態である。

3日の朝日新聞では大きな紙面を割いて、憲法を取り巻く諸状況を丁寧に取り上げている。現政権の集団的自衛権容認の問題、9条の平和主義の理念、その他様々な問題を提示し、分かり易い解説も掲載されていた。その一つが「一からわかる立憲主義」という頁である。立憲主義の意義と役目は、①権力者も憲法に従い統治、すなわち権力者を縛ることだ。②憲法で権力を分立させ人権を保障。国家権力を集中させないこと。③多数決だけで人権を守れない恐れがあるので、多数決で決めてはならないことを憲法で線引きし、少数者の人権を守る。ということを歴史的にも検証している。自民党の改憲案や現政権の発言などは、これらの大事な諸原則を意図的に否定し破ろうとしているように思える。

 ところで上の③の少数者の人権では、最近の国内状況はとても憂慮すべき事態が増大しているように思われる。具体的には「差別」の問題だ。差別は私たち自身の内側にも存在する事柄である。その内なる差別体質を正直に受け止めながらも、どうしたら差別という「隔ての壁」(エフェソ2:14)を克服し、異なる他者と共に生きられるかを日々問われている。ここ新宿区でも行われる「ヘイトスピーチ」のデモや、いくつかの所で散見される「Japanese Only」の問題は遠い世界の事ではない。過剰な熱気で迎えられた2020年の東京オリンピック開催だが、世界中から人々を招こうとするその開催地で、異なる他者への嫌悪と排除の動きが広がっていることは問題である。身近な憲法問題がここにある。

 同じ日の別な紙面には、「『食肉』めぐるドキュメンタリー映画、差別問い学生が上映会」という記事が載っていた。立教大3年のH氏が6日に多摩市立永山公民館で開く、映画「ある精肉店のはなし」の紹介である。H氏はこの映画を観た経験から、と畜業への差別を知り、差別を糾弾するのではなく、この映画のように、小さくとも現実を訴える力が社会を変えるのだと感じて上映会を企画したという。知る努力を放棄したら改善は難しい、との意見も私たちへの問いかけである。

坂町坂だより NO.331


   関東よりも約1ヶ月遅い、東北各地の桜前線開花の便りが届いている。GWに満開を迎える地域も多いだろう。今年の冬が長かった分だけ、春も少し遅れてきたようだ。
一方千代田教会では初夏の香りに誘われるように、庭の木々には若葉が芽吹き、日に日に大きくなり、雑草が生い茂り始めている。3月中旬に教会学校のMちゃんが植えたジャガイモも土の中から芽を出し始めている。さらにここは新宿なのだが、隣家との境では「蕗」が大きくなってきた。そんな庭の環境を保つために、妻が今期2度目の草取りに励んでいる。ついでに町会の役員さんが大好きな蕗も採ってお裾分けして喜ばれた。彼には不在の時の管理や水撒きもお願いしているので、駐車場を貸したりして日頃から仲よくして頂いている。
 そんなご近所の皆さんも毎年楽しみにして頂いているのが教会のバラである。すでにたくさんの花芽が伸びている。GW過ぎには開花すると思われるが、ざっとみて2000本ほどの花芽があるだろう。このたくさんの花芽に混じって、私が「蔓芽」と呼ぶものも伸びている。今はその蔓芽を伸ばす時期ではないので、棘に刺されながらもそれらを切り取る。花芽に栄養分を送るためである。大きくて太い花芽には10輪以上の花が咲く。1番花が終わりその花ガラを切り落としてやると、2番花が数輪咲く。さらに3番花も咲くものもある。平均すれば1つの花芽から5~6輪は咲かせているので、すでに教会のバラの壁は1万を超えるバラの花に飾られることになる。道行く人も足を止めて見入り、またわざわざカメラを抱えて来られる方もあるくらいだ。
 このバラの親株は被災した新生釜石教会の庭に今も生きている。昨年はカトリックのS姉たちと「釜石のバラ・プロジェクト」に取り組んだ。50本以上の挿し木をして、教会の庭で世話をしたのだが、釜石の孫たちが全て根を張り生き延びた。S姉たちの活動を支援する全国各地の方々に届けられ配られたはずだ。津波で傷ついた釜石のバラの孫たちが、今全国に散らばり、新しい根を張り美しい花を咲かせようとしている。この四谷でも道行く人に挿し木をお分けしている。親株の復活を祈りながら、東北より1ヶ月早い「バラの教会」ももうすぐである。



 

坂町坂だより NO.330



 23年前の秋、釜石湾に臨む小さな尾崎白浜漁港の岸壁で小魚を釣っていた。そこで偶然出会ったのが漁師のSさんである。遠野から釜石に赴任する前に一番先に友人になったのは漁師であった。以来ワカメ・ホタテ・牡蠣の養殖漁業の様々な経験をさせてもらい学びと楽しい時を過ごした。また自家消費分のワカメを分けてもらい、「会堂建築ワカメ」として新会堂建築では大いに貢献してもらった。3年前の大津波で友人たちは海の財産を根こそぎ奪われた。岩手沿岸の諸教会、幼児施設の支援とともに漁師の友人たちへのささやかな漁業復興支援も続けている。

昨年からワカメの生産が再開された。春の遅い三陸では寒風に吹かれながら、大きく育った養殖ワカメの刈り取りが始まる。幹縄に巻かれた種付きのロープ、そこから芽が出て根が育ち、幹縄の下へと葉が成長を続ける。種巻きだけは人工だが、その後三陸のワカメは農薬も使わず、もちろん科学肥料も必要ない。豊かな広葉樹の森林から流れ出る栄養豊富な河川水が海水と混じり合い、そこで育ってゆく。ミネラルの豊富な天然食物、生活習慣病予防に効果があり、ダイエット効果や健康・長寿増進に最適の食材・ワカメはただ自然の力だけで成長してゆく。

さて収穫してきた生ワカメは岸壁で待つ家族に手渡され、直ぐに大きなお風呂のような釜で茹でられる。時間にして1分弱、茶色っぽいワカメが鮮やかな緑色に変化する。それを再び冷たい海水に通して荒熱を取り、水気を切ってから大量の塩をまぶして漬け込む。次に軽く水気を切ってから、11本手で取って中芯と呼ばれる茎を抜き出す「芯抜き」作業を行う。その芯抜きしたワカメを土俵袋と呼ばれる絞り袋に詰めてプレス機にかける。圧力をかけて圧縮し水分を絞り出す。そして最後に小袋に詰めて三陸産の「塩蔵ワカメ」が完成する。その塩蔵ワカメは冷蔵庫で半年以上保存できる。

被災した友人たちの「復活のワカメ」を新生釜石教会に代わって諸教会にお求め頂いている。新生釜石教会は修築が終わったばかりでまだ余力がないからだ。献金を含めての「復活のワカメ」は、新生釜石教会と新会堂建築に取り組む宮古教会、被災支援活動等のために大いに貢献する。できるだけ多くの教会・方々に協力頂けるようにと励んでいる。