先日次女から『遺体~明日への10日間』というDVDが送られてきたことを、この便りのなかで書かせてもらった。その中身について長女と確認のやりとりをしているなかで、彼女が原作を購入し、一気に読み終え、それを携えて東京に来て伝道礼拝に出席した。山梨に戻る際に原作とDVDを交換した。直後から引き込まれるように原作を読んだ。
圧倒的な迫力と深い感動、心が揺さぶられる強い衝撃を覚えた。DVDとは比較にならないその現実の厳しさと想像を絶する現場の状況が思い浮かぶ。若いルポライターの緻密な取材に基づく生々しい証言の数々。50人以上の方々から話しを聞いたそうだが、本に登場するのは10数人である。しかしそれらの方々は全員が実名で記されており、釜石時代には何人もの方々と交誼を重ねてきた。彼らは圧倒的な数の死者たちを前にして、震災直後から戦場のような現実に直面する。死者たちの多くが知己や親戚、親友・友人関係という極限の状況下で、黙々と死者たちを葬るために夫々がなすべきことを全力で果たしてゆく。その姿にはただただ頭が下がるだけである。私の知己の方も何人も亡くなっているが、私には何ができただろうかと自問してみる時、全く自信がない。
DVDを遥かに超えた原作の迫力とはいえ、本の文章からは、立ちこめる臭いもせず、泣き叫ぶ声もすすり泣く嗚咽も聞こえるわけではない。ご遺体の冷たさが感じられるわけではない。夫々の現場がどれほど凄かったのかを私たちは想像するのみである。
しかし若いルポライターの石井氏は、それらの厳しい極限の現実の前で苦闘する方々が、同郷で同じ町内に住んだ仲間への深い愛、限りない優しさ、冷静な決意に基づいていることを随所に感じさせる文章で書き綴っている。医師のK先生は、父親が2度の釜石艦砲射撃で亡くなり負傷した万を超える人々を検案・治療した医者であり、2代にわたり極限を経験されている。体型は私と同じくらいである。だが石井氏は「大柄の明るい男」と記す。K先生はそれだけの存在感があり、人物の大きさを感じさせる方なのだ。被災地に関わるに当たり、限りなく謙遜に謙虚になるべきを改めて示された。素晴らしい釜石人賛歌の本でもあり、弔うことから始まる復興の一歩を忘れてはならないと学ばせて頂いた。
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